影送り

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彼が久しぶりに会った幼なじみはベッドの上だった。 朝大学に行こうと駅に向かってる途中だった。運悪く車に惹かれ彼女は病院に運ばれた。 彼が病院に着いたときには既に昼過ぎ。彼女はもう息を引き取っていた。 彼は病院で絶望していた。思い出したあの時にせめて連絡でもしておけば…後悔はさらに彼の心を蝕んでいた。 彼が病院を出たときは既に5時を回っていた。 気付けば幼い頃よく行った公園にいた。 「なぜだ…なんで…」 彼はどうしていいかわからなかった。自分を完全に見失っていた。 「もう一度…せめて人目だけ…」 彼は思い出した。 (その日に影送りをすれば死者に会えるの) 「そうだ…影送りをすれば!」 日は落ち始めている。時間はない。 「止めなさい」 女の声に制されて彼は振り向いた。 「あんたは…」 あの時の白髪の女。凄い形相で彼を睨んでいる。 「今送るのは止めなさい」 「今しかない!日がもう落ちるんだ!影が消える前に!」 「心を写されるわよ」「訳のわからないことばかり!だからなんなんだ!!俺は彼女にもう一度会いたい!!!もう一度会って別れを言うんだ!!!」彼は女を無視して影を見ている。 「止めなさい!」 彼女は声は届かない。 (これで会える!これであいつに!) 「やっと会える…綾…」 「だから止めろと言ったのに…」 日は彼が送ったと同時に落ちた。 「心とは、実体のない者にも存在する。影は常に実体と一緒。影にも魂、心が宿る。死者は魂、だが闇に変わる瞬間、心と入れ替わる。彼は自分の影に、彼女の心を写してしまった。影は弱い。実体に霊が取り憑けば祓うのは容易ではない。それが影に取り憑かれれば容易く乗っ取られる。乗っ取られればどうなるか…説かずとも解るだろう」 女は続ける。 「気分はどうだ?綾とやら」
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