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「はぁ…
目がチカチカしてきた…」
長時間のパソコンの作業は、若い神谷でも目にくるらしい。
日が暮れたというのに、残業が当たり前になってる。
「駄目だ。
少し、休憩がてらにトイレに行ってきます…」
目頭を押さえた神谷が立ち上がった。
「……早く終わりたいな…」
神谷がトイレに行くのを、鏑木が見て呟く。
んーっと体をほぐすと、肩を回す鏑木に俺も一旦作業を止めた。
背広のポケットから、携帯を取り出すと着信もメールも入っていなくてため息が漏れた。
「高橋さん、何か用事でもあるんですか?」
それを、目ざとく見ていた鏑木が聞いてきた。
「いや。何もないよ。
時間を見ただけ。」
ふーんと、何か探り出そうとしているのが見え見えで、時間なんて壁に掛けてある時計を見ればわかるのに、見栄を張ってしまった。
………
そうか。
何日も、連絡をよこさない彼女に俺は、心のどこかで期待していたんだ。
遠距離だからと、割り切った関係なら干渉しなくて済むと思っていたのに…。
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