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「…早く行ってやれ!神谷!」
気づいたら、自分の声が響いていた。
どう動けばいいか、分からなくなっている神谷。
あんなに、待ちわびていたのに軽くパニックになっているみたいだ。
きっと、頭の中はいろんな考え事がグルグル回っている。
仕事のこともあるし、初めての出産を迎える眞依美さんが心配。
神谷がここで、抜ければ俺と鏑木で神谷の分の仕事が増える。
「…え…でも…」
それは、一番わかっているのは神谷自身。
「……高橋さん…」
俺の後ろにいた、鏑木の助けを求める声がした。
「いいから。
眞依美さんの所に行け!」
「…は……はいっ!
鏑木さん、すいません。」
神谷は、自分のデスクから鞄とコートを掴むと今にも飛び出して行く勢いだ。
「……神谷!」
そんな神谷を引き止め、振り返った彼に伝えた。
「無事に生まれたら、連絡しろよ。」
「は、はいっ」
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