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残業が終わったのは、日付が変わろうとしていた。
今晩は、近くのビジネスホテルで泊まった方がいいかもしれないな。
「ふぁ~。もう、こんな時間か…」
目が据わっている鏑木の表情を見ると、疲れがドッと出た。
「………」
「………」
神谷が帰ってから、二時間以上は経っただろうか。
暫く、そうボーっとしながら考えていると、鏑木が呟いた。
「……産まれたんですかね。神谷の赤ん坊。」
彼も、俺と同じことを考えていることに気づいた。
携帯を開くと、何もメールや着信はなかった。
「さぁな…」
「しかし、一番若い神谷が父親だなんてな~。
どんな心境なんですかね?」
「…嫌がらせか?
俺に、聞くなよ。彼女がいる鏑木なら、想像しやすいんじゃないか?」
「少し、考えてみましたけど。全く想像つかないです。」
「…どんな、感じなんだろうな。自分の子供ができるって。」
目を閉じると、嬉しそうに出産の時を待ちわびている、神谷の顔を思い出す。
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