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「何て、小さいの?」
考え事をしていると、隣に女性が立っていた。
神谷の赤ん坊の他にも、何人か赤ん坊が見られるようになっているのに、何故か俺が邪魔そうに赤ん坊を見ている。
「…あ…すいま…せん…」
退いてあげようと、女性の方へ視線を送った時だった。
「………何で…」
そこには、連絡がない辻 律子が立っていた。
「何でって、私は眞依美の友達よ?
お見舞いに来ても、おかしくないでしょ?」
彼女は真っ直ぐ、ガラスの向こうを見つめながら答えた。
なるほどな。
眞依美さん、律子が来ることを知っていたな。
帰るに帰れなくなり、また暫く俺は赤ん坊を見つめていた。
律子も、それ以上何も話さず黙って見つめている。
プライドなんて、捨てるつもりだったんだろう?
きっと、今なら気持ちが伝わると思う。
優しい眼をした、律子と気持ちが一緒だと思ったからだ。
「………なぁ。」
彼女の視線が俺へと向いた。
そして、そっと囁いた。
その言葉を聞いた、彼女の驚いた表情を見つめた。
end
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