何もかも切なくて

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鬼山の声に滲んでいたのは、怒りではなく切なさだった。 彼も淋しい人なのだ――。 そう実感すると、やっかいな大仕事などと考えていた自分を反省する。 私はなるべく彼を傷つけない理由を伝えたかった。 「百合絵さんは鬼山様を褒めていました。エリートさんで、とてもしっかりした方だと」 「では、どこが悪かったんですか?」 「自分には勿体ない方だとおっしゃってました」 「それは、社交辞令……。断る時の決まり文句みたいなものでしょう?」
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