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坂を登り出した2人は、その風景の美しさに圧倒されてしまった。
「すげーな。桜で上が見えねぇぞ。」
勇気が上を見たまま歩きながら言った。
「ああ。トンネルって感じだな。」
零も上を見ている。
「ここをこれから毎日通るのか…。何かいいねぇ。」
勇気は少し笑った。
「まあどーせすぐ散るんだけどな。」
零が冷静に言った。
「つまんねぇな、お前。」
勇気が失笑しながら言った。カバンを背負いなおす。
「だってさ、夏は毛虫つくし、秋は落ち葉ハンパじゃねーし…。」
零はまだ上を見ている。
「それだからお前は芸術の成績が3なんだな。他はいいくせによ。」
勇気が嫌みっぽく言った。
「……。」
零は黙って視線を前にやり、そのまま走りだした。
「あっ、待てよ、零…ったく、あいつ、本当に時々わかんねぇ……おい!零!」
勇気は独り言をいいながら、後を追って走った。
そのまま走り続け、校門に着いた。すると、白い大きな門が、2人の前にたたずんでいた。
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