45人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「いないね、姫様」
あれから半刻が過ぎたが一向に蒼空を見つけられない二人。
空には星が瞬いている。
「一度、副長と合流した方がいいかもしれないな」
斎藤の提案に沖田が頷き、踵を返した。
その時――
「……くしゅん」
聴こえてきたのは可愛らしいくしゃみ。
二人の足も自然と止まる。
「念のために聞くけど、今のくしゃみって一君のじゃないよね?」
「あのようなくしゃみを俺がすると思うか?」
「天地が引っくり返ってもあり得ないよ」
となれば。
二人の足は自然と蒼空のいる木の下へ。
見上げると木の葉の隙間から鮮やかな着物の裾が見える。
「やっと見つけたと思ったら、まさか木の上にいるなんてね」
「予想外だ」
見つけたまではよかったが、また新たに問題ができてしまった。
蒼空を傷つけずにどうやって下ろすか、二人はあれこれと思案する。
「取り敢えず局長と副長、それと昭史殿にも知らせた方がいいかもしれないな」
「そうだね。
じゃあ一くんは近藤さんたちに知らせに行って。
僕は昭史様のところに行くから」
やることが決まり、二人が木に背を向けると同時に制止の声が。
「待ってください!」
.
最初のコメントを投稿しよう!