春夢、夜風と共に

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「いないね、姫様」 あれから半刻が過ぎたが一向に蒼空を見つけられない二人。 空には星が瞬いている。 「一度、副長と合流した方がいいかもしれないな」 斎藤の提案に沖田が頷き、踵を返した。 その時―― 「……くしゅん」 聴こえてきたのは可愛らしいくしゃみ。 二人の足も自然と止まる。 「念のために聞くけど、今のくしゃみって一君のじゃないよね?」 「あのようなくしゃみを俺がすると思うか?」 「天地が引っくり返ってもあり得ないよ」 となれば。 二人の足は自然と蒼空のいる木の下へ。 見上げると木の葉の隙間から鮮やかな着物の裾が見える。 「やっと見つけたと思ったら、まさか木の上にいるなんてね」 「予想外だ」 見つけたまではよかったが、また新たに問題ができてしまった。 蒼空を傷つけずにどうやって下ろすか、二人はあれこれと思案する。 「取り敢えず局長と副長、それと昭史殿にも知らせた方がいいかもしれないな」 「そうだね。 じゃあ一くんは近藤さんたちに知らせに行って。 僕は昭史様のところに行くから」 やることが決まり、二人が木に背を向けると同時に制止の声が。 「待ってください!」 .
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