103人が本棚に入れています
本棚に追加
「気持ちのいい朝ですね。こういう日には、何か新たな出会いがあるかもしれません」
「出会い……ですか?」
「えぇ、以前もこんな朝の日に素敵なティーカップを発見したのですよ。今度、是非お茶しに来てくださいね」
「はい。ではそろそろ授業があるので、失礼します」
「よろしくお願いしますね」
学院長に一礼して、再び歩み始める。ふと、今朝の事務所での会話を思いだし、学院長を振り返る。
「学院長!」
「はい、何でしょう?」
僕が振り返るのを分かっていたように、別段驚いた様子もなく、学院長は振り返った。
「今年の一年生で神曲楽士の資格を取った人がいるって本当ですか?」
「ふむ……ツゲ君は情報が早いですね」
顎に手を当て、しばし考えるような仕草をして、学院長は視線を上げた。
「えぇ、本当ですよ。本人や周りのためにならないので、今は秘密にしてますけどね」
そう言い残して、学院長は去って行った。
やっぱりいるんだ。本当の天才が。この学院に。
「案外、お前の受け持つクラスにいるのかもな。その一年生は」
それまで黙っていたコーティが冗談めかして言ってくる。彼女は学院長が嫌いなのだ。
最初のコメントを投稿しよう!