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正直、恵美は新しいクラスに満足しているとは言えなかった。
性格の合わなさそうな人ばっかりだったからだ。
仲の良かった男子友達は他のクラスに散らばり、親友を含めた女子友達も散り散りになってしまった。
しかしそんな不安を消し去るぐらい新しいクラスの女子はハイテンションながらとてもフレンドリーで優しかった。
人と群れる女子を嫌う恵美にとって、群れるのを好む彼女たちには初めは嫌気がさしたが、それも何だか微笑ましく思えた。
それでも恵美の心につっかえているものがあった。
それは、去年同じクラスだった瀬戸勝(セトマサル)の存在。
彼には、恋人という関係にはなかったものの、悩みの全てを吐き出していた。
今まで数人と付き合ってきた恵美だが、彼氏にすら言えないことや、彼氏についての悩みを相談し、また瀬戸も恵美に色々なことを話してくれた。
恵美はつい先日まで村越真弘(ムラコシマヒロ)という彼氏がいた。村越と付き合っているときも瀬戸とは連絡を取り続けた。
瀬戸もその時他の学校に彼女がいたが、恵美と連絡を取り続けていた。
ある日、恵美の中に瀬戸に対する思いが生まれた。
それは、「友達」に向けての感情ではなかった・・・それからはあっけないものだった。
瀬戸に対する思いが募るにつれて、村越に対する感情は薄れていき、最終的には「もう受験生だから」という理由で別れを告げた。
別れたときも瀬戸に泣きながら電話をした。瀬戸はただただ恵美の話を聞いてくれた。
自分から別れを告げたのに何故泣く必要があるのか自分でも分からない恵美に、瀬戸の存在はとても大きなものと化していた。
それに続くように瀬戸も彼女と別れた。
その話を聞き、安堵を覚えた恵美は、同時に自分が憎くなった。
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