2人が本棚に入れています
本棚に追加
瀬戸は恵美に対して優しかった。
何故だかは分からない。
ただ他の女子以上に恵美を慕ってくれてることは一目瞭然だった。
いつしか思いは、好意に変わっていった・・・
ある日、恵美はいつもの帰り道を由紀と帰っていた。
「ねぇ、恵美ちゃん。恵美ちゃんってさ、去年から瀬戸と仲いいよね」
「ん?そうかな?」
「そうだよー去年結構噂たってたよ?」
もちろん恵美もその噂は知っている。
「瀬戸勝と松倉恵美はただならぬ関係だ」という。
「ほら、私と瀬戸って趣味とか合うしさ」
「ふーん・・・でもさ、村越と別れてから瀬戸の話多いよね?」
一瞬ドキッとした。由紀は気付いている。そう感じ、恵美は少しだけ由紀に話してみることにした。
「実はね、ちょっと気になってる…かな」
「やっぱり?そうだと思った」
確信があったようだった由紀は嬉しそうに言った。
「お願い、言わないで」
懇願するように答えた恵美に「当たり前じゃん」と由紀は言ってくれた。
人に話したら、もう自分の気持ちに嘘をつけなくなることは分かっていた。
だから、恵美は今まで誰にも話さなかったのだ。
由紀はその事を絶対に話さないでいてくれた。いつも一緒にいる圭子にさえも。
「最近どう?」
由紀との帰り道の決まり文句になっていた。
「昨日メールしたよ」
「今日学校でしゃべったんだ」
そんな他愛のないことが嬉しかった。
メールで瀬戸はよく「松倉のことは信用してる」とか「明日遊ばない?」と言ってくれたり、いつもは名字で呼び合ってるが、たまにお互いファーストネームで呼び合ったりもした。
「私、このままずっと瀬戸のことを好きなのかな」
恵美はそう心に本気で感じていた。
心移りはしない。本気で決めたはずだった。
そんな心に転機が訪れるとも知らずに・・・
最初のコメントを投稿しよう!