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数日間、なにも追求せずにメールをしていたら相手から
「俺が誰か気にならないの?」
と、来た。
秀と確信を持っている恵美は「いや、秀って分かってるから」とあっさり返事をした。
翌日学校での休み時間恵美は秀輔のクラスに行ってみた。
「あ、松倉」
恵美が教室に来ることを予想していたかのように、机に開いていたノートから目を離して恵美を見た。
「やーっぱり秀だったじゃん」
恵美は持っていた英語の教科書で秀輔の頭をぱこん、と叩いた。
「面白かったろ?」
数年間まともに見なかった分、秀輔はとても変ったように思えた。
何かは分からないけれど。
「べーつにぃ」
少し口角を上げて笑うとつられて秀輔も笑う。
今まで学校で全くしゃべったことのなかった二人が普通にしゃべっているのが物珍しいのか、教室にいる数名の女子がこちらを向いていた。
正直秀輔の顔は悪くない。むしろ、凛々しいと言える。
「ねぇ、秀」
「ん?」
「・・・いや、やっぱりいいわ」
少しばかり聞いてみたいことがあったが、ここで聞く必要もないだろうと思い恵美は口を閉ざす。
「に、しても久しぶりだな」
秀輔は椅子から立ち上がり自らの机に腰をかけそう聞いた。
「そうね。小学生の時もそこまでしゃべってなかったと思うけど」
恵美は腰かけていた秀輔の向かいの机から腰を下ろす。
「さて、次移動だから行くわ。また暇だったらメールして。私、暇だから。」
「勉強しろよ受験生」
秀輔は持っていた飴を一つ恵美に放り投げた。
「人をメールで焦らして遊んでる誰かさんに言われたくないわよ」
投げられたそれを恵美は器用に受け取り「ありがとう」と言って教室を出た。
恵美の頭では
「今日は何を話そうか。顔が昔と変わっていたことを伝えようか」
そんなことしか考えていなかったような気さえする。
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