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直也とはクラスが違うから、お互いが教室に入ってしまうと顔を合わせることもない
午前の授業中
机の中にいつも隠し持ってる料理本を開いて家の冷蔵庫に入ってる食材のことを考えながら難しい顔をしていると、隣の席の寺野さとるがこっちを見てクスクス笑いをこらえていた
今時の明るい髪色、流行の腕時計をつけた腕を枕にしながら、男のくせに妙に調った顔立ちでこっちを見ている
休み時間になると、どっかのクラスの女子がきて一言二言交わしていく、いわゆる人気者
アタシは遠慮のない彼の視線に愛想笑いで返すと、また料理本に目を戻した
今日のお昼休みは、いつも一緒に食べているゆかが部活のミーティングがあるってことで一人ランチだった
教室の机でお弁当をひろげると、購買でパンを買ってかじりつきながら帰ってきた寺野が覗き込んでくる
「うわ、うまそ、それ宇佐ちゃんの手作り?」
宇佐みずきという名前のアタシは女子には「みずき」って呼ばれて男子には「宇佐」とか「宇佐ちゃん」って呼ばれることがほとんど
「ああ、まあ」
そっけない返事を返すと、それにこりずに横の席に座って話しかけてくる
「宇佐ちゃんさ、秋山にも毎日お弁当作ってんだって??」
「ああ、まあ」
おんなじような返事を繰り返す
「えらいねえ、でも・・・そーんなうまそうな弁当だったら俺もほしいかも」
またお弁当を覗き込まれて、なんとなく「いる?」と言わなきゃいけない雰囲気に持っていかれた気がした
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