憂鬱

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スパンっと良い音がした。 刀で何かを斬った音だ。 幸い切れたのは無機物で、 緑髪のバカは避けていた。 「何者だ貴様!」 「自分に名乗る名前はない!」 「自分に名乗ってどうする馬鹿」 頭が足りない切り返しは、大きな混乱を招く。 しかし、『落とし武者』は 至って冷静だった。 「何者だろうが構わない、か。 まあ肉塊になるだけだしな。」 「ほんじゃ、ちょっとだけ本気でいくかんね!」 そういった馬鹿は地面に手をつく。 その手を上にあげると、 掌に地面がくっついたか野様に 地面から岩が出現した。 しかし、地面は何も変わっていない。 恐らく砂を媒体に地属性の魔力で巨大化させたようだ。 加えて先程披露した運動能力。 彼にとっては、それなりの重量と硬度を持つ物なら ただの岩でも十二分な凶器になる。 まあ当たり前の話だが。 「そ~れ!」 案の定それを思いきり投げつける。 『落とし武者』は子供の鉄砲遊びよろしく手で銃の形を作り、 指先から強烈な勢いで 水が放たれた。 岩に穴が開く。 そこにさらに刀を刺し、 少し捻っただけでいとも簡単に真っ二つにして見せた。 岩は内側からの衝撃に弱いというが、いくらなんでも無理がないだろうか。 「真正面から来ても無駄だ。 地属性には相性が良いんでな」 風も水も地には相性は良くないが、 ようは組み合わせと使い方だ。 「高い水圧で放った上に 風を纏って威力を上げているな」 「偽、かわって」 「確かに俺にはうってつけの相手。 だが断る」 「なんで!」 「賭けで決めたからだ」 「ですよね~」 気楽そうな会話にカチンと来たらしい。 今度は彼が飛びかかってきた。 「こいつ相手に空対地か。 選択ミスだな」 緑髪が地面に両手を、 今度は突き刺した。 そしてそれを一気に引っくり返す。 そう、それはまるで 「ちゃ・ぶ・だ・い・ がえしぃぃい!」 本人もいっている通り、 「ちゃぶ台返し」そのもの。 しかし、『落とし武者』は四つ切りにしてしまった。 はがされた地面は結構な大きさ。 それは攻撃と同時に身を隠す カーテンにもなる。 着地したときには、 緑髪はいなくなっていた。 「チッ、何処だ!?」 右、左。前、後ろ。 居ない、つまり上。 「おりゃ~っ!」 空中から、どこから出したのか 巨大なハンマーを振り下ろす。 高く飛んで逃げた『落とし武者』が目にしたのは、 クレーターになっている 馬鹿の着地した場所だった。
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