1人が本棚に入れています
本棚に追加
それはいつのことだったのだろう。
今の私はもうロクに覚えていない。でも、たぶん、あの時の私には大切だった出来事。
私は、幼なじみのA君に、告白された。
高校三年生の夏休み。灼熱地獄の甲子園。暑さを物ともせずに繰り広げられる青春の闘い。
A君の所属するチームは甲子園出場すら絶望的な弱小だった。
そう、3年前までは。
A君がうちに入ってから、全てが一変した。
A君だけじゃない。チームみんながA君に調和していくように何もかも変わった。
3年後には、B校は優勝候補にまで成長していた。
そして私も彼にいつの間にか惚れていた。
たぶん、彼にとって私は幼なじみ以上の特別な存在ではない。でもそれで良かった。
言い訳なのかもしれないけど、彼と友達でいられなくなってしまったら、何もかもが壊れてしまいそうで怖かったから。
――そんな頃だった。準決勝戦の前日、みんな一緒の馬鹿騒ぎも終わって、夕焼けが照らすA君と二人きりの帰り道。私はA君に告白された。
最初のコメントを投稿しよう!