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――――――・・・入院して一週間。
検査や治療ばかりで全て制限されている桜さんとはほぼ逢えていない。
逢えたとしても仕事を終えてから面会の終わる時間までのほんの1時間程で、
僕はまともに付き添うことも出来ていなかった。
土日も仕事や外回りがあることが多く、帰って片付けなければいけない書類も山程。
でも僕が仕事を休もうとすると、桜さんがこれでもかと言う程怒る。
ー"米粒みたいな存在価値しかない平社員が、重役休暇なんて片腹痛いわよ!!働け稼げ金貯めろ!!!私とこの子養うんでしょーが!!!!"ー
・・・普通に怖い。
心配でたまらないけど、こうまで言われたら頑張るしかない。
『てゆうか僕が居てもなんにもならないしな・・・。』
残業で一人オフィスにて仕事を片付ける中、そんなことを考えて溜め息を吐いた。
桜さんはとても強い人だから。
僕の支えがなくても、自立するなんて簡単だ。
今だって復帰しようもんなら世界中の科学者が喜んで迎え入れるだろう。
恐怖に打ち勝つ術を持ち、前を見据えるたくましさを彼女はいつだって纏っている。
僕に頼る必要もない。
・・・彼女はとても強くて・・・
いつだって僕の前を歩きながら笑ってみせる人。
それに癒され、支えられ、
幸せに満たされているのは 僕のほうだ。
僕は彼女を幸せに出来ていると思い込んできた。
彼女の笑顔の源になれると。
だけど、本当に彼女は
僕でよかったんだろうか?
今、僕が感じるよりも大きな不安にまみれて恐怖と戦っている筈なのに・・・
僕は彼女の傍に居てやることも出来ない程ちっぽけだ。
だからこんな大事な時にもこうして仕事に向き合っていなくちゃいけない。
「――――――・・・僕・・・居る意味あるのかな・・・。」
広いオフィスに一人、
暗闇に覆われた世界でひとつ、
行き場のない虚無感を吐き出した。
彼女は 一人でも 大丈夫。
その強さが 今は、
たまらなく寂しい。
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