*06..カラフルスカイ*

47/60
前へ
/241ページ
次へ
「私の我が儘で彼・・御両親と疎遠になっちゃったの。仕事だって今大事な時期なのに、私とこの子のためにいつも頑張ってくれてるわ。だからせめて・・・少しでも、彼のために笑っていたい。」 ―――――――・・・鼓動が静かに、 優しい響きで僕を巡る。 そのあとも少し看護婦さんとの会話が続いていたけど、僕の耳にはそれよりも鼓動がざわめいて仕方なかった。 その場を離れ、誰も居ない廊下をただのろのろと歩く。 『・・・寂しい・・・なんて、子供みたいだ・・・。』 僕は父親になるのに。 どうしてこんなにも ちっぽけ・・・。 諦めない。 ただ祈りのようなそんな誓いだけを握りしめて、 僕は いつまで経っても 情けない。 強くなる と、決めた筈なのに。 『大変な時にまで気を遣わせてどうするんだよ。もっとしっかりしなくちゃ。』 君に追い付くように。 繋がれた手を離さないように・・・。 「―――――・・・あら?芹沢さん?」 「え。」 呼ばれて振り向くと、桜さんを担当してくれている(桜さんと話していた)看護婦さん。 と、 「奏君・・・今日仕事は?」 桜さん。 「・・・・・・・・・っ」 何故 固まってしまうかな、僕。 別に悪いことしてないのに。 「ハッ!まさかサボリ・・・!?」 「え!?いやっ、ちちち違うよ!今日はお休みで!片す仕事も終わったから!あの・・っしんぱ・・・あ・・逢いたく・・て・・・」 "心配"なんて 余計なお世話だとか言われそうで・・・ なんでか言葉を入れ替えた。 けど"逢いたい"なんて なんか逆に 情けない。 いやもうすでに情けないとこばっかだけど。 一人気まずそうに俯く僕の数メートル先で、 看護婦さんが小さくクスッと笑いをこぼした。 反射的に顔を上げる。 「あ、ごめんなさい。可愛らしい旦那さんだなぁと・・。」 「!?」 『・・・かっ・・・!?』 その一言に大きなショックを受け石化した僕を尻目に、桜さんに「ね。」なんて合意を求める看護婦さん。 呆れている桜さんから合意の合図をもらうことなく、僕に軽く頭を下げクスクス笑いながら行ってしまった。 .
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1898人が本棚に入れています
本棚に追加