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「赤ちゃんが・・・聴いてるよ。今の桜さん、見てる。」
静まり返る病室の中・・・
僕の鼓動はただ鋭く身体に突き刺さる。
「!・・・っか、奏君までわかったように言わないで!そんなわけないじゃない!・・・私・・・私のっ・・・私のお腹で死にかけてるのよ!?」
「でも今生きて君と繋がってるんじゃないか!!!」
「・・・っ!!」
何があったか 僕にはわからない。
あの桜さんが不安と絶望に覆い潰される程、
もしかしたらよくない宣告を受けたのかもしれない。
でも・・・――――――
「桜さんの全部・・・桜さんのなかで見てる。僕らには見えない痛みや苦しみも、その子にだけは見えてるんだよ。」
人 は
いつだって独りぼっちだから。
どれだけ愛し合い、支え合い、
理解し合おうとしたって限界というものがあって。
それはどうにも出来ないし、仕方のないこと。
何故なら身体ひとつにつき、命もまたひとつしか与えられていないからだよ。
いくら隙間なく愛せても
隙間なく理解することは出来ない。
桜さんの心の一粒まで、感じ取ることは僕にも誰にも出来ない。
ただひとつ・・・
君と繋がる命を除いては。
「・・・一人で、呼吸も出来ない・・・掌程のその子だけが、君の全部を共有してるんだ。」
「・・・っ」
「君と生きてるその子はまだ、"諦める"ことを知らずに必死に君のなかで呼吸をしてるんじゃないか!その子は・・・っ"生きる"ことしか知らないから!だから今も君にしがみついて頑張ってるんじゃないか!!君が諦めようとしてどうするんだよ!!?」
「だって!!・・・だっ・・・て・・っ・・・それでもっ・・・これ以上・・はっ・・」
――――――・・・神様が人間に新たな命を預ける時、
その命には"生きたい"という本能だけを埋め込み、そして放つ。
だから・・・母体という居場所に守られる、まるでちっぽけなその存在は
自ら死を選ぶことはない。
いや、出来ない。
"生きたい"という、ただひとつの人の能に従っているからだ。
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