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「・・・だりー・・・。」
春独特の眠くなるような暖かい空気の中、別に興味も行く気も無い学校の下見をしに行く途中。
誰も居ない桜並木の歩道をのろのろと歩きながらポツリと呟いた。
まだ蕾の桜ばかりで味気無い景色を目に映し、すぐに持っていた地図に目線を落とした。
断固として共に引っ越す事を諦めない父親の意地に折れて地元を離れてから2週間程。
折角の日曜に、通いたくも無い金持ち学校の下見に行かねばならない理由はなんなんだ。
更に正門は閉まってるだろうから、裏の警備管理室に話を通さなきゃいけない。
クソ親父め、今日の晩飯ピーマンの肉詰めにしてやる。
『・・・ピーマンの肉詰めも食えない父親って・・・。』
「つーかもう着いていいだろ。この地図どーなっ・・・」
目的地に辿り着けない地図から目を離し不意に右側の馬鹿高い塀を見上げた瞬間、思わず言葉を詰まらせた。
「やーっと気付いた。えぇ男がこないなとこで何してんのん?」
・・・気付いたんじゃねぇよ。
たまたま視界に入ったんだ。
女みたいな顔した怪しい男が高い塀から身を乗り出し、にんまり笑っている。
俺の背丈より更に1メートル以上高い塀にどうやって登ったのか謎だが、その前に何モンだよ。
「・・・誰。つーかそっちが何してんの。」
「語尾に"?"がついてへんあたり、さして俺に興味無い証拠やな。」
・・・野郎に興味持つか。
「それ地図?どこ行きたいん?俺移民やけどここらなら知ってんで?」
・・・移民て。
さっきからなんか訛ってんな。
関西?
俺とタメかそんくらいか?
「・・・学コ。」
「学校?て、何校?」
「・・・鷹乃宮。」
「ほんならもう着いてんで。」
「?」
着いてる?
見当たらないけど。
「目の前にあるやん。」
「は?」
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