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・・・全体的に緩くて、そこに居るのに掴めない。
愛想もいいしよく笑うのに
どっか引っ掛かる。
南田那智は、逢って数分でそんなふうに感じさせた。
イメージは・・・ 雲 かな。
「・・・じゃあ大阪出身なんだ。」
「そー。もーこっち周りにノリえぇ奴おらんくてさぁ、やっぱ坊ちゃん嬢ちゃんはアカンなぁ。」
「そりゃ関西のノリに適応出来る坊ちゃん嬢ちゃんが居たらむしろ会ってみたいもんだな。」
「響ツッコミ出来るやん。イケメン同士仲良うしようや♪」
「・・・自分でイケメン言うな。あと巻き込むな。」
日陰の屋根を支えている柱に寄り掛かりながら、しゃがんで草をいじる南田那智を見下ろすとこちらに目を向けてガキみたいにニッと笑った。
「アンタの笑い方緊張感ねぇな。」
「今緊張感要らんやろ。」
「多分普段からねぇだろ。」
「あはは、当たり!」
・・・なんで俺、こんなとこで野郎と語ってんだ。
つかいつ帰れるんだ。
まずこいつここで何してんだ。
―ザァァアッ!
「!・・・風、強くなってきたな。」
そう言って見上げた空には、小さな雲がひとつあるだけだった。
「―――・・・響、頑なやなぁ。」
「は?」
南田那智は摘んだ小さな花をボーッと眺めながら独り言のように呟いた。
「名前も呼ばんし、距離も保つ。どんだけ踏み込んでも自分のテリトリーは守る。」
「すげぇ分析力。」
「いやいや響のが凄いで?」
「どこが。」
俺の質問には答えないまま、花びらを1枚ずつ取っては吹く風に流した。
小さく軽い花びらは風の動きに合わせて宙を舞って地に落ちていく。
「あーっ♪なんや楽しくなりそうや!」
「はぁ?」
「響!まず俺響と友達なりたいから、握手!」
・・・なんでこいつ何事も突然なんだ。
立ち上がって満面の笑み。
ピンと伸ばした手を俺に向けてきた。
「・・・勘弁して。そうゆうの興味無い。」
俺はさっくり無視してあっさり開いちゃう開かずの扉に歩いていく。
勢い負けして着いてきちゃったけど、俺の嫌いな世界であることには変わりはない。
人懐っこさに釣られて着いてきゃったけど、深く関わるつもりなんか無いし。
「じゃ、ね。」
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