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独白。小さな歪みの願い。
…… ……
アタシは、自ら望んで"このようなもの"に身をやつしたわけではありません。
生まれもしっかりしたものです。
決して、生まれながら娼婦となるべき運命にあったわけではございませんでした。
裕福ではありませんが、貧しくも無い。
"それなり"の家庭に生まれ育ってきたのです。
同じ遊女たちの中には、"自分が犠牲になることで、世の女たちを悪から救うのだ"という孤高の志を持って入る方も、それはおりましょう。
しかし、アタシは違う。
決してなりたくなかった、こんなもの……っ!
何故このようなことになったのか?
忌々しい。
それもこれも、全て"あいつ"のせいなのです。
"あの男"……っ!
今思えば、あれだけの金回り、
おかしいと言えば、おかしかったのです。
卑屈で、自分の富にしがみつき、腹の底では何を考えているか分からない。
"得体の知れない男――、"
ええ、よくお分かりになりましたぬ。
そうです。
アタシはあいつを愛しておりました。
結婚の約束も致しました。
親に反対され、ふたりで逃げ出して、親戚一同を敵に回したのも全てあいつのためです。
ふふ、今思えば愚かなことですわ。
アイツは始めから、アタシを陥れることしか考えていなかったのでしょう。
でも、アタシはそれを信じた。
彼の底知れない企みを、不器用と信じこんでまんまと騙されたのです。
愚かとしか言い様がありません。
自業自得でしょうね。
笑いたければ、お笑いになって。
アタシには、汚れた身体とゆっくり腐敗していく心しか残っておりませんもの。
仕方がありません。
親を裏切った罰ですわ。
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