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「人間学的にみても、奴の性格的にみても、宿無しはありえない。
もし俺があいつの立場だったとして、恨みを持たれた女の側には決して寄らない。
馨、奴が恨みを買った女の居場所は?」
ポケットにつっこんだままだった地図を引っ張り出す。
人の手によるものと思しき複雑な地形は、ミミズがのたくったような記号でうめつくされている。
少女が身を乗りだし、指を滑らせた。
「まず、我々の呼称での弓末(ゆずえ)地区。ここには、RAAの施設があります。
次に、南に下って戸谷(とや)地区、麻烏(あさお)地区。
東に向かって弦掛(つるかけ)地区に、不夜(ふや)それぞれ2人。
西の矢割(やわり)に1。
それから、中央の籠輿(かごこし)に3人。
これで全てです」
「案外多いな」
「少ないですよ。各地区、囲われているほとんどの遊女に話を訊きましたから。まぁ、しらない者がほとんどでしたけども」
地図の上に、朱色の印が付けられた。
「業者の方は、こんなかんじだな……。
麻烏に、金を持ち逃げされた奴。
弦掛に、そそのかされて女売らされた奴。
矢割に、女のために殺人を犯した奴……。
残っているのは――、」
"帝都西方、蛾座見地区――"
そして、ここには
「大手しか相手にしていなかった奴が、唯一女をおろしてる、"小規模な娼館がある"」
恐らくここが、奴の個人的なツテだ。
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