さて問題です。幸せになれたのは、誰でしょう?

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さて問題です。幸せになれたのは、誰でしょう?

* * * 「で、彼らは一緒になったと?」 パチリ。 小気味良い音が、嫌に大きく響き渡る。 窓の外は、珍しく喧騒に沈んでいる。 離れたあの街が、騒いでいるのだろう。 いつもどおり。 あの場所は、決して眠らない。 決して休まない。 一日も、一秒も例外はない。 たまたま風に運ばれてきたのだろう。 普段なら聞こえないはずの音に、目の前の人は耳を傾けているようだ。 パチン。 澄んだ瞳がこちらに向き直り、クスリと笑った。 僕はただ、次の手を考える。 "あまりこの目をみつめていると、取り込まれてしまうのだ" 「なァンだ。ハッピーエンドじゃあないですか。誰も死なない、状況は円く収まる、男女は連れ添う」 パチリ。 「大団円だ」 僕は、満足したように細く長い息を吐き出した。 女の睫毛が伏せられ、ふふ、と笑いが漏らされる。 「本当にそう思う?」 ゆっくりと足を組み、細めた瞳がこちらを見つめて来た。 僕はというと、 意味もなくゾッとした。 "嗤ッテイル、" 僕は思わず上目遣いに顔を上げ、「そうでしょうよ」と不満の声を上げた。 「ハッピーエンドじゃあないですか。これをバッドエンドだという人の方が少ないと思いますよ。幸せに収まって――、」 「幸せなんか、ありはしまい」 「え?」 女は僅かに目を伏せ、もう一度、「幸せなんて、どこにもなかったじゃあない」と口許をゆがめた。 「詐欺師は野に放たれ、監視役は情を持ってしまっている。これでは、監視になりはしない。陥れられた女達に現実的な救済はなく、頭を下げにいったところで、憎しみを増やすに終始する。本人たちだって、好きでそうしたところで、末路は目に見えてますでしょう?」 "サア、ドコガ幸セ?" 女は、さも嬉しそうに問うて来た。 僕は静かに溜め息を吐く。 彼女は、こういう人なのだ。 「そうはいいますけどね。そこまで言及したら、リアリティが過ぎますよ。もちろん小説にリアリティは必要ですが、"人物たちの不幸な背景"など、リアリティのうちに入りはしないんです。余程の悲劇を売りにしてる以外はね。誰だって円く収まったように見えたものの、背後に置き去りにされた不条理なんてみたくありません」
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