SICK 1

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ふと顔に優しく触れる指先を感じて体が呼び起こされる 「大丈夫 大丈夫だから」 とささやく声がする 夢の中だけじゃなく、実際にも泣いていたのか、無意識にしゃくりあげた 自分のその声に意識も覚醒して、うっすらと目をあけると覗き込むように近くにある顔に驚いて、慌てて上半身を起こした 「夢見ながら本気で泣いてる人はじめて見た」 半分笑いながら、半分真剣に話すその顔に見覚えがある 長めの髪形がよく似合う端整な顔立ち 目にかかる前髪がますますそれを強調している 化粧もしていないのにきれいな肌 うすく色づいて少し微笑んだ唇 長い足を折り曲げてしゃがんでいたのか「よいしょっと」という掛け声と共に立ち上がると、座っているアタシからは太陽が隠れるほどの長身 背後の青い空に目の上が鈍く痛む 白いロンTにデニムをあわせただけのシンプルな服装も、清潔感が演出されているみたいで似合っている 「あれ?俺のこと忘れちゃいました?」 寝起きのはっきりしない頭でぐるぐると考えていると、彼からヒントが与えられた 「夏に、海で、」 そうだ、妹の・・・・妹のあみの彼氏だ 「あみの・・・・」 彼は微笑むと「正解!」と嬉しそうに笑った .
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