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「ええ。それで少し聞きたいのですが、死んだときの感じを教えてもらえないでしょうか?」
彼は率直に尋ねた。待ちすぎて遠まわしに聞くのが、面倒だった。しかし、いざ聞いてみると、なんだか禁忌にふれたような気分に襲われる。だが、もう遅い。
「あっはっは」
幽霊は嫌がらず、豪快に笑う。それから、逆に尋ね返した。
「おまえさんもおかしなことを聞く。して、なぜそのようなことに興味を持った?」
「いえ、私ではありません。うちの生徒が」
「おまえさん、教師か?」
「ええ、まあ」
「ふむ。じゃあ、その教え子に伝えてやりなさい。死ぬときの感じを知ることは不可能だ、と」
幽霊はおごそかな口調で言い切った。
「なぜですか? あなたは、その、死んだんでしょ?」
「なにを言うか。まだわしは死んどらん。今おまえさんの目の前に、こうしているではないか」
草介は首をかしげた。どういうことだ。
「つまりじゃ、死ぬときの感じを知るにはな、あるかどうかは知らんが、天国、地獄にいる者に聞くしかないのじゃよ」
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