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いつものように支度をしようとし、時計をふと見た。午前八時半。朝礼がはじまるのは、午前八時五十分。
「遅刻だ!」
彼は叫んだ。髪もととのえず、服だけ着替え、家を飛びだす。自転車を必死で走らせる。まにあった。ギリギリセーフ。
草介は職員室に荷物を置き、急いで教室へ向かう。
「佐山先生」
校長が呼びとめた。しかし聞こえないフリをした。急がなければならない。かまっている暇はないのだ。
二年二組の教室の戸を勢いよく開けた。
「すまない、みんな。さあ、席に着いて」
こう言いながら、草介は教壇に向かう。だが、不思議な感じがし、足をとめる。
やけに静かだった。それも不気味なくらいに。いつもなら生徒たちが談笑などをしているはずなのだが。
草介は教室内を見まわした。生徒たちが一箇所に集まっている。その場所は窓際の一番うしろ。里実の席だった。
なにかあったのか? 草介はおそるおそる近づいた。
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