ささやかなこの気持ちを

13/14
前へ
/428ページ
次へ
「そ、そんなバカな!」  草介は驚きのあまり叫んだ。そして力なく座りこんだ。信じられない。昨日、俺は彼女と会って、しかも話している。じゃあ、あのときの彼女は幽霊だったのか。    4  夕焼けが二年二組の教室を赤く染める。生徒たちはすでに下校した。草介は里実の席に着き、しおれかけている花をぼんやりと眺めていた。  今日の授業は、まるで身が入らなかった。まったく集中できず、内容もあまり覚えていない。だが、昼休みのことだけは鮮明に覚えていた。 「里実、先生のことが好きだったんだよ。それで、いつか告白するんだって……」  里実の友人がやってきて、こっそりと教えてくれた。  彼はまったく気づかなかった。里実が頻繁にきていたのは、そのためだったのだ。 「ごめんな、平坂。おまえの気持ちに気づいてやれなくて」
/428ページ

最初のコメントを投稿しよう!

421人が本棚に入れています
本棚に追加