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「そ、そんなバカな!」
草介は驚きのあまり叫んだ。そして力なく座りこんだ。信じられない。昨日、俺は彼女と会って、しかも話している。じゃあ、あのときの彼女は幽霊だったのか。
4
夕焼けが二年二組の教室を赤く染める。生徒たちはすでに下校した。草介は里実の席に着き、しおれかけている花をぼんやりと眺めていた。
今日の授業は、まるで身が入らなかった。まったく集中できず、内容もあまり覚えていない。だが、昼休みのことだけは鮮明に覚えていた。
「里実、先生のことが好きだったんだよ。それで、いつか告白するんだって……」
里実の友人がやってきて、こっそりと教えてくれた。
彼はまったく気づかなかった。里実が頻繁にきていたのは、そのためだったのだ。
「ごめんな、平坂。おまえの気持ちに気づいてやれなくて」
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