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「ねえ、あなた。これなんなの?」
カイ夫人が聞いた。年は若く、二十代半ばといったところ。
「ああ、それは失敗作だよ」
夫であるカイ博士が答えた。こちらは五十代前半ぐらい。
この二人、いわゆる年の差夫婦であった。
「じゃあ、こんなリビングに置かないで、さっさと処分してよ」
カイ夫人は不満そうに訴えた。彼女が指さす場所には、一体の人型ロボットが仏頂面で立っていた。身長は二メートル近くあり、頭が四角い。胴は人間よりひとまわり大きかった。
カイ博士はロボット工学者であり、さまざまなロボットを開発していた。だが、このロボットはどうやら失敗らしい。
「わかったよ。学会から帰ったら処分するから。それまで、さわらないでくれよ」
こう言い残し、彼は出かけた。
カイ夫人は、ロボットを迷惑そうに見た。リビングに立つ無言のそれは威圧感を放っており、居心地を悪くする。また、妙に視線を感じる。彼女は気味悪がり、シーツをとりだした。ロボットにそれをすっぽりと被せた。
カイ夫人は、やれやれと一息した。
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