惜しまれる人

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 葬式が行われた。喪服の人々が棺に花をおさめていく。そして泣きながら叫ぶ。 「バカヤロー、勝手にいきやがって!」 「あたしはどうすればいいのよ!」 「ちくしょー、もっと生きててくれよ!」  そんなようすを見ながら、葬儀屋がつぶやく。 「ああやって、みなさんから惜しまれるとは。あのかたは、よっぽど偉大なことをしたんだろうな」 「おや、あなたは事情を知らないのですか?」  それを聞いた参列者が口をはさんだ。 「ええ。なにをしたんですか?」 「とんでもないやつですよ。あちこちから借金をした挙げ句、自殺しやがったんだ。そのせいで、貸した人はみな大赤字だ」
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