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最初は何か怖さを感じつつすれ違ったが、俺は何故か後ろを振り返り少女を呼び止めた。
「あ、あの!」
少女は足を止めて此方を見た。
僕は頭を掻きながら
「その怪我大丈夫?」
瞬きをしながら俺を直視するが、返答はない。
あまり女の子と話すのは得意では無いのだが、俺は返答がない彼女を直視した。
「それ、病院行った方がいいぞ。怪我の多さが異常だ、細菌とか入ったら危ないし。」
少女は何かを確認すると、漸く口を開いて一言呟いた。
「問題ない。」
俺は言葉を失ったように何も話せなかった。
問題ないの一言で、僕は何故か少女の怪我に対して安心してしまった。
それは、その言葉の意味を奏でるかの様に僕の脳に響いてくる。
少女は何も喋らなくなった俺を見ると、そのまま去って行った。
その後ろ姿が見えなくなるまで、息が止まった様な錯覚に襲われた。
あの少女は一体なんだったのだろう。
俺はそればかりを考えて一日が過ぎてしまった。
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