little 1

24/33
前へ
/145ページ
次へ
小さな小さな胸が痛んでいるのに、 きっと… このヒトは気づいていないんだ… 短いスカートをヒラヒラさせて、一度も振り返らないその背中は、 一生忘れる事のできない傷を作った… 涙を我慢して唇を噛み締めるハルに、 『我慢、しなくていいよ。』 切なそうに微笑むミカコがしゃがみ込んで、ハルの頭を撫でた。 『…うっ…』 ガシガシと腕で拭いても拭いても、涙は滝のように溢れてきた。 デートだと言っていつも夜はいなかった。 いつも 『父ちゃん、ゲットしてくるからね。』 が口癖で、 半分期待して、半分呆れてた。 彼氏がいないときは、機嫌はMAXに悪くて、部屋中はぐちゃぐちゃで、 叩かれはしなかったけど、何かモノはよく飛んで来た。 どんな母親だっ。 と、小さいながらに何度か思った。 …きっと… 僕は拾われた子供だ。 とか… 本当の親はどこかにいるんじゃないか。 とか… …思った。 …でも…でも… …でもっ たまに…作ってくれた、オムライスが… 中のケチャップライスの色がまばらだったけど… 卵の半熟加減が絶妙で… ケチャップで書いてくれる 『ハル』 の文字が嬉しくて… 何より、一緒に… 一緒に食べてくれから… 笑って…一緒に… オムライスだけは食べてくれたから… 単純な俺は… いつもそんな事で… 帳消しにしちゃうだ。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

971人が本棚に入れています
本棚に追加