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『ハルっ?何度も電話したんだよ?』
「…あぁ。わりぃ。」
携帯からは、イチカの少しピリピリといた声。
『どうしたの?何かあった?』
「…いや…なんも。」
『…パパの事…?』
正直に言うと、イチカの親父さんの事は、少し頭から飛んでいた。
というより、最低かもしれないが…今は考えるのが面倒くさかった。
「…いや。そうじゃない…。」
『…じゃあ、何?』
「だから、なんでも…」
『いつもそう。ハルは、頼ってくれないっ。何かあっても、何も話してくれないっ。』
ハルは大きなため息をついて、前髪をかきあげた。
『…もぅ…面倒くさくなった…?』
「…時間…ないから…切るぞ。」
耳から携帯を離す瞬間に、イチカが鼻をすする音が聞こえた。
俺は最低だ…。
ハルは、心配そうに佇む紗奈に手を上げて、「…じゃあな。」と歩き出した。
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