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走ることに自信があった紗奈もハルに追いつくことが出来ず、アパートまで来ていた。
前に一度、来たことがある。
酔っ払って、ハルの部屋で一夜を過ごして…
何にもなかったけどっ。
それから…龍之介が別れを切り出した場所。
紗奈は頭をブンブンと振って、アパートの階段を駆け上がった。
「…ふーっ…」
やっぱり年だ…。と思っていると、
ガタン!
玄関のチャイムに指を伸ばした瞬間、中から何かが落ちる音とハルの声。
紗奈は、ただならぬ雰囲気を感じ玄関の扉を開け勢いよく部屋の中へ入って行った。
「ハル!?どうかしたっ?ハルっ?」
パンプスを無理やり脱ぎ捨て、息を切らしたままリビングへと繋がる廊下を渡り、扉を開いた。
「お袋っ!」
紗奈は片手で、口を覆った。
叫ぶハルの腕の中には、ぐったりとした母親。
頭元には、白い粒状の薬らしきものがたくさん転がっている。
「お袋っ!おいっ」
何度も呼ぶハルの声には、応答は見られない。
「…救急車っ」
紗奈は携帯を取り出し、息を吐きながらボタンを押した。
ふと、テーブルの上に目をやると、『ハル』とケチャップでかかれたオムライスが置いてあった。
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