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PTSD
心的外傷後ストレス障害。
人生は、映画のようにエンドロールがながれて終わりじゃない。
続いていく。
卒業式の日。
奇跡的に記憶を取り戻した紗奈に、いらないオマケがついてきた。
一人になると襲われる恐怖感。
動悸やめまい。
過呼吸や体の震え。
その症状に気付いたのは、一緒に暮らし始めて1ヶ月ほど立ち、龍之介が出張で一晩、家を空けた夜だった。
『一人で大丈夫なの?』
「平気だよー。子供じゃあるまいし。」
明るい声でそう話す紗奈に、母・洋子は「そう?」と少し残念そうに答えた。
紗奈は記憶が戻って以来、実家にはあまり寄りつかなくなっていた。
義父であった聡を強く思い出してしまうことから、心療内科の結城先生からもあまり実家へは行かない方がいいと助言されていた。
『そう言えば、まだ結城先生のとこ通ってるの?』
「うん。…なんかまだしばらくは…って、なんか…PT…なんとか?っていう疑いがあるとか…」
『え?どこか調子悪いの?』
「いやっそうゆうわけじゃないんだけど…」
まずいまずい。ママが心配してきちゃうよ。
と思いながら、無理やり明るい声で、
「…あのさっ、あの人…裁判どうなった…?判決…出たよね?」
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