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「…で…何があったの?」
「何が?」
アヤカのベッドの上で、雑誌を広げて寝そべるハルに、
「何がじゃないでしょ。…今日じゃなかった?イチカの親に会うの。」
ハルは返事をせず、パラパラと雑誌をめくっている。
アヤカはため息をつきながら、テーブルに置いたビールを開けて一口飲んだ。
「はぁー…何…うまくいかなかったの?」
動きが止まるハルに、アヤカはビールを差し出した。
「…うまくいく、いかねぇじゃねぇよ。」
体を起こしたハルは、ビールを受け取り、それを一気に口の中に流し込んだ。
「…ふーっ…大反対…。というか、有り得ないらしい。」
「なんで?」
ハルは、ガシガシ頭をかいて、
「…イチカはまともな家庭で育っていて、俺は片親だからだと。」
「…なにそれ…。」
イチカの家は、中小企業の会社を経営していた。
恐らくイチカの父親の頭の中には、一人娘のイチカの結婚には、跡継ぎになりそうな婿。
しかし現れたのは、塗装会社で働く、がたいのいい跡取りとはほど遠い男だった。
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