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私が生まれたのは、
今から17年前の梅雨の季節だった。
そして、
見事なまでの、
どしゃ降りの日。
母は今でもその雨の音をよく覚えていると言うし、
父も、スーツに染み込んだ雨の重さを未だに忘れられないと言う。
だけどそれはそれだけ印象深いというだけじゃなくて、
毎年私の誕生日に降る雨が、
彼らの記憶を取り出しやすい位置に置き直しているからだと思う。
出来過ぎなぐらい、
仕組まれているのかと思うぐらい、
毎年降る雨。
両親にとってはそれもいい思い出らしいけれど、
当の本人の私には、
それは手放しで喜べるものでは無かった。
だって私は、
自分の誕生日に限って、
雨の配達人なのだ。
それが嬉しい人なんて、
そうそういない。と思う。
* * *
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