第Ⅰ話

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  *  *  * それでも私は、 決して雨を嫌っているわけではなかった。 だけど梅雨の時期、 特に自分の誕生日に降る雨は、 あまり好きでは無かった。 偏頭痛がするわけでもないし、 髪がはねたりぺたんとなるわけでもない。 ただ、 あの薄暗い色の空が、 何となく好きになれなかっただけ。 重苦しくのし掛かってくるようなその表情は、 鬱陶しくて目を逸らしてしまいたくて、 何だかそれが自分自身のように思えて、 もどかしかったから。 誕生日の雨は、 好きになれなかった。 そしてまた今年も暗い空を見る時には、 去年や今までと同じように成長していない自分に直面してうんざりするんだろう。 そう考えて、 私はさっきの考えを打ち消した。 (……ううん、やっぱり、) 雨は嫌いだ。   *  *  * ……そんな私の誕生日まで、 あと3日。
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