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菜穂子の両手が私の頬を温かく包んだ。
掌に預けたままの顔をあげると、菜穂子の艶っぽい唇が静かに動く。
「麻美、私の目見てよ」
心の中を見透かされたみたいで、どきりとする。
「麻美って私の目、見ないよね」
真剣な眼差しで問われると、私はなにも言えない。
頬に添えられた掌が柔らかくて、泣きそうなくらい嬉しい。
でも、それと同じだけ切ない。
私は珍しく、菜穂子の目をじっと見つめた。
目を見れないのは切ないからだと、視線に込めたつもりだった。
菜穂子の手は私の頬から離れて、グラスに添えられた。
ワインを一杯喉に流して、菜穂子は私を見て微笑った。
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