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「もしもし、はい、桐谷です」
「…父が…そんな…
は、はい、今から向かいます。」
電話を切った
お兄ちゃんの顔は青ざめていた。
―ガチャ―
「ただいま~…」
タイミングよく玄関のドアが
開く音がして入ってきたのは
お母さんだった。
酔っているのか顔が真っ赤で
足元がふらついていた。
そんなお母さんに
お兄ちゃんはすがりつくように話し始めた。
「今まで何やってたんだよ…、
お父さんが…っ病院に…」
「…何言ってるの浩之…?嘘…」
泣き出しそうなお兄ちゃんと
何が何だか把握出来てないあたしと
お母さんはそのまま病院に直行した。
着いた頃にはもう遅かった
お父さんの死因は交通事故だった
仕事帰りに
大きなトラックとぶつかってしまったらしい。
沢山の痛々しい傷と出血
冷たくなっていくのが
手にとるように分かった
沈黙のまま家に帰ると
テーブルの上には
蝋燭のついてないホールケーキが
そのまま残っていた。
「今日は苺の誕生日なんだから
ケーキだけでも食べなよ…」
お兄ちゃんはケーキを切り分けて
あたしの前とお母さんの前に置いてくれた
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