蒼 始 -アオノハジマリ-

8/11
前へ
/731ページ
次へ
  逸斗は、知らなかった。 “楽しい”という感情だけで野球はできないという事を。 小学2年生―― すべてを知るには、まだ幼な過ぎたのだ。 彼も、誘われるままリトルリーグに入団した楠本も。 それでも、楽しむ心がなければふたりに始まりは訪れなかっただろう。 毎日、毎日。 上級生に雑じって汗を流す逸斗と楠本。 だが決して……仲よしこよし、楽な道程ではなかった。 最初は、下手くそだという理由でからかわれる。 それが悔しくて皆の何倍も練習を重ねると、今度は生意気だといじめられる。 複数でプレーする野球の本当の難しさを目の当たりにしたふたりだったが、どちらの口からも『辞める』という台詞は飛び出さなかった。  
/731ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1671人が本棚に入れています
本棚に追加