1671人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ハヤト」
「……クス」
「“甲子園”ってすげー!」
ふたりは互いを指差しながら、感激の声を揃えた。
“すごい”――何がどうすごいのか、あまりに漠然とし過ぎていて幼いふたりには判らない。
ただ、本能的に“すごい”と感じた。
五感が、そう叫んでいる。
スタンドを巡るブラスバンドの重厚な演奏。
その音に負けぬ、応援団の声援。
交じり合う熱気と人とが、譬え難いコントラストを描く。
まさに“聖地”――
こんな素晴らしい球場で野球ができたら、どれほど幸せな事だろう。
逸斗は想像する。
黒土の中心、小高いマウンドに立つ自分自身の姿を。
最初のコメントを投稿しよう!