蒼 始 -アオノハジマリ-

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  「……ハヤト」 「……クス」 「“甲子園”ってすげー!」 ふたりは互いを指差しながら、感激の声を揃えた。 “すごい”――何がどうすごいのか、あまりに漠然とし過ぎていて幼いふたりには判らない。 ただ、本能的に“すごい”と感じた。 五感が、そう叫んでいる。 スタンドを巡るブラスバンドの重厚な演奏。 その音に負けぬ、応援団の声援。 交じり合う熱気と人とが、譬え難いコントラストを描く。 まさに“聖地”―― こんな素晴らしい球場で野球ができたら、どれほど幸せな事だろう。 逸斗は想像する。 黒土の中心、小高いマウンドに立つ自分自身の姿を。  
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