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「おまえのせいで優勝できなかったんだぞ!」
女子選手を探していた逸斗の耳に、甲高い罵声が潜り込んだ。
「マコトさえ投げられたら、優勝できたのに!」
続いて、別の声。
球場の片隅、何事かと思いそっと覗いた逸斗は息を飲む。
見つけた――
だが、ただならぬ雰囲気を前に、逸斗は踏み出すタイミングを逸していた。
「おまえの腕が折れたらよかったんだ」
不穏な空気の中心、右腕に痛々しいギプスをはめた少年……察するに『マコト』であろう人物が、女子選手に辛辣な台詞を刺した。
言葉の暴力はそこで終了。
そして今度は女子選手を置き去りに、人波が捌(ハ)けた。
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