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小さく震える背番号が、涙する女子選手を語っていた。
逆に、自然に声をかけるなら今しかない――
「――失礼なヤツらやな」
そう思った逸斗は、頼りない背中に言葉を落とした。
「オレから1点も取られへんかったくせに、
ピッチャー代わったくらいで優勝なんかできる
かい」
相手の反応を待たず、言葉を続ける逸斗。
ゆっくりと振り返った女子選手は、マウンド上で見せたものとはまるで別人の弱々しい表情を作っていた。
「あの“マコト”いうヤツが投げとったら、もっと
点差がついてたはずや」
涙で頬を濡らす女子選手にタオルを差し出しながら、逸斗は熱い言葉を贈る。
「オレらを3点に抑えたんは、おまえがはじめてや」
「…………」
「おまえ、女なのになかなかやるやん」
思ったままをストレートに告げる逸斗。
そんな彼に、女子選手は瞠目の表情を向けた。
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