1671人が本棚に入れています
本棚に追加
「欲しい?」
ごく自然に、再度訊ねる逸斗。
まだ不思議顔を湛えてはいたが、女子選手は力強く頷いた。
「手、出して」
満足げに破顔を作り、逸斗は女子選手を促す。
今度は小さく頷き、女子選手は両の掌を差し出した。
まるで、大切なものを受け取るかのように。
「ほんまに知らんのやな。 チェンジアップ」
吹き出してしまうと繊細な女子選手を傷つけると判っていた逸斗は、口許に押し寄せる笑みを堪え、自分の左手を突き出した。
「またの名を“OKボール”」
少しだけ得意げに説明しながら、逸斗は親指と人差し指とでざっくりとしたOKサインを作ってみせる。
「やってみ」
しなやかな左手で表現したOKサインを揺らすと、女子選手は真剣な顔で逸斗に続いた。
最初のコメントを投稿しよう!