邂 逅 -メグリアイ-

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  「ほな、またな。 蒼真…… えーっと……」 自分だけ名乗り、女子選手の名を訊いていなかった事に気づいた逸斗。 催促に似た眼差しを向けると、女子選手は今までとは打って変わって凛とした声を披露した。 「流風…… “蒼真 流風(ソウマ ルカ)”!」 (ソウマ…… ルカ…………) 表面は頼りなさげに映るが、きっと芯は強いのだろうと感じさせる声。 「金メダル、大事に持っとけよ、“ソウマ ルカ”!」 今度対戦する時にもう一度、このメダルを交換しよう―― 叶わない、叶うはずのない約束を揺れる背番号に投げる逸斗。 同情? 優越感? いや、そうではない。 この瞬間の逸斗は信じていた。 どんな舞台であるかは判らないが、必ず、この女子選手と対戦できる日が訪れる……と。 煌めく想いを胸に、逸斗は残夏の空気に消えゆく女子選手の背中をいつまでも眺めていた。 これが、運命の相手……『蒼真 流風』との出逢いだった。  
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