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大阪への越境入学を考えなかった訳ではない。
だが、逸斗はやはり地元京都での進学を選んだ。
理由は――
彼女に、気づいてもらうため。
自分は、彼女が神奈川のチームだったと憶えている。
だからきっと、彼女も自分が京都のチームだったと憶えてくれているはず……
そうやって、褪せない記憶を彼女にも期待する逸斗。
そして、自身の決意を楠本に話して聞かせたのは、彼の迷いを知っていたから。
実家が開業医である楠本は、野球を続けるべきかどうか悩んでいた。
親の期待に応えるのは決して悪い事ではない。
だが、楠本の野球に対する想いを知る逸斗は、苦悩する友を放ってはおけなかった。
ただ、誘う事はしない。
それはフェアではないから。
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