謳 歌 -コウフクカン-

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  『蒼真 流風』が理由だった。 だが、すべてではない。 逸斗が平晏高校への進学を切望する最大の理由は、ほかにあった。 「……平晏の監督さんと、話したんや」 そう、それは平晏高校野球部を率いる監督の『江嶋(エジマ)』。 江嶋は他校の監督と違い、両親に逢う事はせず、直接逸斗を尋ねてくれたのだ。 そして、投球練習をしている逸斗にこう云った。 『惜しいなあ』 動作を止め、見知らぬ大人の声に耳を傾ける逸斗。 『上はええけど、下があと一歩やな』 『……下?』 『下半身や。 下を鍛えたら、今よりええ球が  放れるようになる』 うちへ来てくれれば即戦力だ、そう云う大人は大勢いた。 軽々しくエースナンバーの事を持ち出す大人も。 だが、逸斗の眼前に立つ大人ははっきりと彼の弱点を指摘してみせた。 自分では気づかなかった、気づこうとしなかった点……  
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