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『君、家はどこや?』
訝しげでもなく、何とも表現し難い表情を浮かべる逸斗に、その人物は問う。
『……西京区、ですけど』
『ほうか。 なら、走って通うて来い。
――平晏(ウチ)に』
戸惑う逸斗に、その人物は自分は平晏高校野球部監督の江嶋だと名乗った。
そして、逸斗の左肩を優しくさすりながらこう云った。
『一緒に、でっかい夢みようやないか』
江嶋の云う“でっかい夢”というのは、甲子園出場ではなく、甲子園優勝だと……逸斗はすぐに理解した。
そして、この人の許でならその夢は必ず叶うと逸斗は思う。
初対面の大人に信頼に似た感情を抱くのは、逸斗にとってはじめての経験だった。
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