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――長いつきあいになるとは、思ってもみなかった。
逸斗が野球を始めたのは、5歳の時。
父親が野球選手だった訳でも、母親が野球部のマネージャーだった訳でもない。
きっかけは、弟の遼介(リョウスケ)が産まれた事だった。
5年間、独占してきた母親の柔らかな腕に、新たな家族がやってきた。
小さくて、頼りなくて……
泣き声ひとつで母親の愛情を掠ってゆく乳臭いその“弟”という存在を、逸斗は好きになれなかった。
それでも、逸斗は利口で、何より母親想いの息子だった。
自分がわがままを云えば母親が困る事を、幼いなりに理解していたのだ。
しかたなく、逸斗は外の世界へ目を向ける事にした。
転がっていたのは、白球――
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