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“白球”とは云っても、草むらに転がるそれはそう呼ぶ事が憚られるような色をしていた。
茶色……とまではいかないが、使い込まれているであろうそれは、土を纏い、暗く変色している。
母親が見ていたら、絶対に拾ってはいけないと云われるレベルだ。
だが、その“白球”はまるで、逸斗に触ってみろと云わんばかりの輝きを放っていた。
太陽の力を借りて。
逸斗は辺りを見回し、おそるおそる草むらに手を伸ばす。
刹那、逸斗の足許から空へ突き上げるように、一陣の風が吹いた。
その流れを追い、視線を飛ばす逸斗。
瞳に映る碧は、泣きたいほど綺麗だった。
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